2025/11/08

アンドレ・マルローの予言 その1

 菅田代表提言 第37回

令和7年11月8日



 アンドレ・マルローの予言 その1

 

昭和39年、ルーブル美術館の至宝ミロのヴィーナスが来日しました。この時フランスの文化大臣に就任していたのがアンドレ・マルローでした。親日家のマルローが尽力してくれたのだと思います。

マルローは「日本が世界を救う」と言い残して亡くなりました。私はこの話をマルローに師事した竹本忠雄先生の講演テープで聞いたのですが、「何故日本が?」と初めはあまり理解出来ませんでした。しかし最近では「アンドレ・マルローの慧眼、恐るべし」と思うようになりました。それを以下に述べます。


 
彼は何度も来日して日本の伝統、文化、芸術を研究しました。そしてキリスト教の聖地エルサレムには行かず、日本の聖地である伊勢神宮や熊野を訪問しました。そこで霊的な啓示のようなものを感じとったようです。マルローはユダヤ教、キリスト教、イスラム教などの一神教では世界を平和に出来ないと考えたようです。

1974年5月4度目かつ最後の日本への旅に赴いた
アンドレ・マルロー氏(右)と竹本忠雄氏(左)
(熊野路から伊勢路への巡礼の古道)

一神教では、人間は神が土の塵(ちり)(何の価値も無いもの)から作ったものですから、神は人間が作った道徳等に縛られる事は絶対に有りません。そして最終的には神が人間を裁きます。人間に恐怖感を植え付けて支配するというやり方です。

それに対して日本の神様は、人間を裁くようなことはしません。日本では誰も命令しなくとも、また罰則が無くとも秩序が乱れない。これは世界の非常識のようです。

私は阪神淡路大震災や東日本大震災が発生した時、「被災地では掠奪も暴行も起きていない」と外国のメディアが驚きとともに報道したのを知り「何故そんな当たり前の事がニュースになるのか?」と不思議でなりませんでしたが、これは日本だからこそ秩序が乱れなかったのであり、世界中で特別な事だったからニュースになったのでした。

最近話題になっている人工知能AIは、人間の行動について9割以上の確率で予想出来るようです。しかし日本人の行動だけは予想出来無いようです。しかも極限状況になればなるほど予想が外れるとのことです。ところが、日本人の特性や精神性をAIに学ばせると、高い確率で行動を予測出来るようになるそうです。この事は、次回もう少し掘り下げたいと思います。 以上

 

 

補足説明

日本の神様は人間を裁くようなことはしないと言うと、「日本の仏教には極楽と地獄の話があるでは無いか」と言われそうですが、これは因果応報を理解させる為の喩え話であります。平安時代の僧侶源信は「往生要集」を著し(嘘つきが行く地獄、ケチだった人が行く地獄、貪りの心が強かった人が行く地獄)等詳しく書かれていますが、地獄に行かないためにとかそんな事をいちいち考えて行動している人は殆どいないと思います。ただ当たり前と思って行動しているのです。これは誇るべき日本人の特性だと思います。 

ちなみにユダヤ人の大富豪は来世の事はあまり考え無いようです。


※竹本忠雄:仏文学者、文芸評論家。筑波大学名誉教授。アンドレ・マルローの研究家として国際的に有名。

2025年3月25日、日仏の文化交流の功労者に贈られるフランスのルネサンス・フランセーズ大賞(メダイユ・ドール)を受賞(産経新聞記事)