向春の候、貴方様には益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて、昨年は日本とトルコの「日土友好125周年」の年に当たり、日土合作映画「海難1890」が上映されました。ご覧になった方もいらっしゃると思います。 何故トルコが世界でも有数の親日国なのか。その発端が今から126年前の1890年(明治23年)に起きたエルトゥールル号遭難事件でした。死者行方不明者587名を出す大惨事でしたが、当時の大島村の村民による決死の救助活動と生存者への献身的な看護活動により六十九名のトルコ人が救助され、日本の軍艦二隻によって本国トルコに送り届けられたのです。日本の官民挙げた救助活動にトルコ国民は大感激し、以来トルコは熱烈な親日国となりました。
ところが、日土友好の物語はこれで終わりではありませんでした。エルトゥールル号遭難事件から95年経った1985年(昭和60年)。当時イランとイラクは戦争状態でしたが、イラクのサダム・フセイン大統領は「48時間後にイラン上空を飛ぶ飛行機は撃墜する」との無差別攻撃を発表しました。諸外国は自国民救助のためにイランに救援機を飛ばします。ところが、先進諸国の中で日本だけは在留邦人救出のための救援機を飛ばさなかったのです。イランには当時在留邦人が200人以上いたにも関わらずです。自衛隊機による邦人救出は当時の自衛隊法にはありませんでした。民間機は安全の保障が無いとの理由で飛びませんでした。在留邦人は日本から完全に見捨てられたのです。諸外国も自国民の救援が精一杯との理由で日本人の搭乗は断られました。万事休す。もはやこれまでと誰もが諦めた時に、トルコ航空機二機が救援に来てくれたのです。こうしてイラン在住日本人215人は、危機一髪のところでテヘランから脱出することができました。当時テヘランには大勢のトルコ人がいたのです。それでもトルコは自国民を危険な車で帰国させ、外国人である日本人を特別機を出して救出してくれたのです。まさにトルコによる95年前の恩返しによって日本人の命が救われたのでした。
しかし、この邦人救出の話は鶴の恩返しでは無いのですから「美談」で済まされる話ではありません。現在世界各地には約129万人もの在留邦人が活躍しています。ところが、戦争や紛争、内戦や動乱が起こった場合、在留邦人を救出するためにわが国では救援機を飛ばすことはできないという問題です。正確に言えば、確かに昨年の平和安全保障関連法の成立によって、自衛隊を邦人の「救出・保護」に派遣することは可能になりました。しかし、そこには「戦闘行為が無い」「相手国の同意がある」「相手国の協力がある」という非現実的条件が付いているのです。紛争地域だからこそ邦人救出が必要なのであって、安全で協力が保証されているところに自衛隊の派遣など必要ないではありませんか。その意味では、現在も在留邦人の命が見捨てられているのが日本だと言えるのです。
かつての日本は「他国の人々の命を救う」国でした。しかし、今は「自国民の命さえ他国に委ねる」国になっているのです。そんな情けない国でいいのでしょうか。そのことを問いかけているのが今回の「第44回歴史講演会」なのです。つきましては、是非この機会に一人でも多くの方々をお誘いの上ご参加下さいますよう謹んでご案内申し上げます。
又、歴史講演会は若い人達にも参加してもらい、日本の正しい歴史を知ってもらうために学生は無料としています。そのため、皆様に協賛金(一口千円何口でも可)のお願いをしています。ご協力頂けます方は事務局までご連絡下さい。(TEL022ー285ー3383)また、講演会当日も受け付けております。
末筆ながら、貴方様の益々のご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。
敬具
平成二十八年二月吉日
宮城ビジョンの会
代表世話人 菅田彰人
◆第44回歴史講演会 平成28年4月23日(土) 14:00~16:30
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